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「33年」(30)おじさん。おばさん。なかないで。

「33年」(30)おじさん。おばさん。なかないで。
シストとカタリナの心は、たちまち、うめきはじめた。カタリナは、こみあげてくるおえつに口に片手をあてる。なぐさめと、はげましの言葉なんて何も頭にうかんでこない。泣きながらシストが声をしぼりだす。

シスト
「ぼくたちも高麗から連行されてきたんだよ。ぼくたちもキリシタンなんだよ。」

カタリナは、泣きくずれそうになってきた。

カタリナ
「ぼうや。神様。助けて……」

ルドビコが、むじゃきに明るく答える。

ルドビコ
「おじさん。おばさん。泣かないで。ぼくは、もうすぐ神様に会えるんだから。しあわせなんだよ。ぼくたち十字架につけられて、両がわから槍でつきさされて殺されるんだって。ぼくは、神様をほめたたえながら死ぬってきめているの。」

パウロ茨木
「それと、神に感謝しながら、だね。」

父親らしくパウロ茨木が口をはさむ。

ルドビコ
「うん。神様にありがとうをくりかえしながらね。」

パウロ茨木
「そうだよ。神に賛美と感謝をささげつつ槍を受けるんだよ。」

パウロ茨木は、よろこびを満面にたたえて息子と話している。かわいい声で息子が答える。ニコニコしながらうれしそうに。

ルドビコ
「大丈夫だよ、お父さん。だって、ぼく、頭の中で何度もなんども練習してるんだもん。」

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2008年9月20日 UP
著者 ミッシェル・マリー・フランソワ奥田力
(C) 箱舟の聖母社

http://lphakobune.web.fc2.com/33nen_030.html


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